音楽に乗って踊り子がショーを繰り広げるストリップ小屋。ショーを見つめる観客の中に、金井淳(山本浩司)の姿があった。
金井は東大大学院卒業の30歳。ある大学に講師として赴任してきたのだが、なんとなくいじられやすい雰囲気の金井は、さっそく歓迎の飲み会で酒癖の悪い先輩講師の山口先生(堀部圭亮)に絡まれてしまう。
学歴は申し分のない金井だが“もてない”ことがコンプレックスとなっていた。恋愛に奥手で、いままで女性と付きあった経験がないのだ。気晴らしにと初めての風俗に行ったものの、慣れない体験に逆にストレスが溜まるような結果となってしまった。
そんな金井はある日、出張で参加した研究会で大学院時代の後輩・北島萌(神楽坂恵)と再会する。ほかに知り合いがいないこともあり、研究会のあとの懇親会でもずっとふたりで会話を交わすのだった。
出張から戻ったあとも、相変わらず山口先生から絡まれたりと気苦労の多い金井。ある夜、大した用もないのだが萌に電話をかけると、そのまま朝まで話は弾み、それ以来、金井と萌は頻繁に連絡を取り合うようになっていく。
実家に戻っていた金井を萌が突然訪ねたりする中で、金井は自分が萌を後輩としてだけではなく、異性として好意を抱いていることに気づきはじめていた。だが、萌は間もなくアメリカ留学に出発することになっていた。
恋に悩む金井は、意を決して萌に自分の気持ちを伝える。そして、もうひとつの決心を固めていた。それは“童貞”を卒業すること。留学が近づいてきたある日、萌は金井の部屋へとやってきた――。
童貞放浪記
監督:小沼雄一
出演:山本浩司 神楽坂恵 ほか
2009年8月8日(土)よりヒューマントラストシネマ文化村通りにてロードショー
2009年/カラー/HD/98分
ベストセラー「もてない男――恋愛論を超えて」「帰ってきたもてない男――女性嫌悪を超えて」で知られる比較文学者・評論家の小谷野敦の自伝的小説が、個性派俳優・山本浩司を主演に迎えて映画化を果たした。
『童貞放浪記』の主人公・金井淳は、30歳にして童貞の大学講師。山下敦弘監督作品の常連であり、多くの作品に出演し日本映画に欠かせない存在である山本浩司が、恋愛に奥手な男の純情と悲哀を見事に表現している。
金井が想いを募らせるヒロインの北島萌には、グラビアアイドルから女優に転進した神楽坂恵。30男の胸を騒がす女性を魅力的に演じて女優としての資質を見せるとともに、その美しい肉体を大胆に披露している。
そのほか、先輩講師の山口に構成作家・映画監督としても活躍する堀部圭亮、舞台で活躍する木野花、綾田俊樹、志賀廣太郎、古舘寛治、松井周、内田慈など実力派キャストが脇を固めた。
監督をつとめたのは、監督作『AKIBA』がカルトな評価を獲得し、深川栄洋監督『真木栗ノ穴』では脚本を手がけた期待の俊英・小沼雄一。本作では、主人公たちの心の機微を丹念に描いていく。
脚色は、劇団“五反田団”主宰で小説家としても活躍する前田司郎。そして音楽は人気バンド・クラムボンのミトがソロプロジェクト・micromicriphoneとして手がけるなど、各界の才能が集った。
とうに青春といわれる年齢は過ぎた。しかしそれを“青春”以外のなんと呼ぼう。甘酸っぱくて、そして切ない、大人の青春恋愛映画がここに誕生した。
- 今井淳:山本浩司
- 北島萌:神楽坂恵
- 山口:堀部圭亮
- 黒瀬:古舘寛治
- 朝原;内田慈
- 本村:松井周
- 犀藤:志賀廣太郎
- 千田:綾田俊樹
- 淳の母:木野花
- 監督:小沼雄一
- 原作:小谷野敦「童貞放浪記」(幻冬舎文庫)
- 脚本:石垣直哉/足立紳
- 脚色:前田司郎(五反田組)
- 製作:清宮武雄/徳永裕明
- プロデューサー:石垣直哉
- 撮影:小松原茂
- 照明:松岡泰彦
- 録音:小野川浩幸/小滝みつる
- 編集:前嶌健治
- 衣裳:宮本まさ江
- ヘアメイク:清末めぐみ
- 助監督:家次勲
- 制作担当:徳永ヒロヒサ
- スチール:宮本むつみ
- ポストプロダクション:穂積進
- 音響効果・サウンドプロデューサー:小野川浩幸
- 音楽:micromicriphone
- 制作プロダクション:フェイスフル
- 製作:SEIWA FILMS
- 配給:アルゴ・ピクチャーズ