2002年9月。日朝首脳会談がおこなわれ、北朝鮮による日本人拉致事件に世間の注目が集まっていたころ。
高校生の少年(笠井しげ)は、不良たちに絡まれて金を脅し取られそうになったところを、たまたま通りがかった見知らぬ少女(韓英恵)に助けられた。不良たちから逃げて電車に飛び乗るふたり。屈託なく笑いかける少女と、うまく彼女と話せない少年。少年が名前を聞くこともできないまま、少女は電車を降りていく。
数日後、あの少女のことが気になる少年は、街で少女の姿を捜す。ようやく人ごみの中に彼女の姿を見つけた少年だが、少女がチマチョゴリを着ていることに戸惑い、立ちすくんでしまう。折りしも報道により北朝鮮への反発が強まっている時期であり、少女は通りがかりの男たちに因縁をつけられて刃物でチマチョゴリを切り裂かれてしまう。少女が助けを求めても周囲の人々は見て見ぬふりで歩き去る。少年も、少女の姿を目の前にしながらなにをすることもできない。そして男たちと少女がもみ合う中で、刃物が少女の胸に突き刺さる……。
少女の葬儀がおこなわれた日、葬儀の様子をうかがっていた少年は、葬儀の列の中に、死んでしまった少女とそっくりの少女(韓英恵/二役)が遺影を抱えているのを見かける。
葬儀の日から、少年はあの少女に近づこうとしていた。少女も、自分を見つめる少年の存在に気づいていた。やがて、死んだ少女の妹だという少女は少年に声をかけると、少年を連れて街から離れたある場所に向かう。立ち入り禁止の柵に囲まれた、その場所には……。
アジアの純真
監督:片嶋一貴
出演:韓英恵 笠井しげ ほか
2011年10月15日(土)より新宿K's Cinemaにてロードショー
2009年/白黒/35mm/108分
反朝鮮感情が広まる街でひとりの在日朝鮮人少女が殺された。少女に惹かれていた少年は、彼女を助けることができなかった罪悪感にさいなまれる。やがて少年の前に現われる少女の妹。少年と少女の妹は旅に出る。「世界を変える」術を求めて……。
その過激な内容から2011年のロッテルダム映画祭で大きな反響を呼んだ衝撃作『アジアの純真』が、ついに公開を迎える。
殺された少女とその妹の二役で主演をつとめるのは韓英恵(かん・はなえ)。10歳のときに鈴木清順監督作品『ピストルオペラ』で鮮烈なデビューを果たし、その後も才気あふれる監督たちの作品に出演してきた若き個性派女優だ。『アジアの純真』は、韓にとって代表作となる作品といって間違いないだろう。
少女とともに旅をする少年には、「花ざかりの君たちへ〜イケメンパラダイス〜2011」などドラマや映画・舞台で活躍する若手俳優の笠井しげ。そして「魔弾戦記リュウケンドー」の黒田耕平が、少女と少年に関わっていく重要な役を演じる。
メガホンをとったのは、プロデューサーとして鈴木清順監督『ピストルオペラ』『オペレッタ狸御殿』を手がけ、『ハーケンクロイツの翼』『小森生活向上クラブ』では監督をつとめた片嶋一貴。豊富なキャリアに裏打ちされた手腕によって、硬質なメッセージと衝動を封じこめた、激しい青春映画を完成させた。
また、タイトルの由来であるヒット曲「アジアの純真」が、韓英恵と笠井しげの歌唱によって劇中で使われているのも注目だ。
モノクロームの画面で綴られる少女と少年の逃避行は、かつての日本映画のようなザラついたエネルギーを感じさせる。『アジアの純真』は、108分の上映時間にわたり、絶えずエネルギーを放ちながら疾走する。
- 韓英恵
- 笠井しげ
- 黒田耕平
- 丸尾丸一郎
- 川田希
- 澤純子
- パク・ソヒ
- 白井良明(ムーンライダーズ)
- 若松孝二
- 監督:片嶋一貴
- 脚本:井上淳一
- エグゼクティブプロデューサー:小曽根太/石川始
- プロデューサー:木滝和幸/門馬直人
- ラインプロデューサー:安藤光造
- 撮影:鍋島淳裕
- 照明:堀口健
- 録音:臼井勝
- 美術:佐々木記貴
- 編集:福田浩平
- VFX:柳隆
- 助監督:茶谷和行
- スケジューラー:江良圭
- 音楽:ken sato
- エンディング曲:韓英恵/笠井しげ「アジアの純真」
- 製作:ドッグシュガー/ロード・トゥ・シャングリラ/HIP
- 企画・制作プロダクション:ドッグシュガー
- 配給:ドッグシュガームービーズ